他人を信用できないと多大なコストを負担することになるって話

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新幹線の安全神話が崩れる事件がまた一つ起きてしまいました。

 「キャー」「助けて」。週末夜の新幹線車内で突然、悲鳴が響き、乗客はパニック状態で逃げ惑った。東海道新幹線「のぞみ」で、刃物を持った男に襲われ乗客3人が死傷した事件。同じ車両に乗り合わせた乗客が恐怖の瞬間を振り返った。【中村紬葵、岡村恵子、芝村侑美】

この事件に関して言いたいことは山ほどありますが、それは他の人が代わりに発信してくれていますのでここでは控えます。ただ元鉄道会社職員のはしくれとして怒りを抑えられません。

多くの先人の努力によって築き上げられてきた世界に誇る「新幹線」が、同じ人間の暴走によって簡単に崩壊する様は見ていて怒りというか悲しみというかむなしさというかうまく表現できない感情に襲われます。

世の中の多くの人が鉄道は安全で当たり前、時間通りに出発して時間通りに目的地に到着して当たり前と思っていることでしょう。しかしその当たり前を維持するのにどれだけ多くの人の努力や苦労があることか、そこまで想像する人はそう多くありません。

実際に鉄道会社で働いていたので、その当たり前を維持するのがどれだけ大変か世の中の人よりも多く目にしていますし経験もしています。

なので今回の事件が起きて乗客が「もう新幹線には乗りたくない」とコメントしているのを見て、とても悲しくなりました。

もう二度とこんな事件は起きてほしくないと思うのは当然なのですが、ではどうやってこういった事件を防げばいいのかと考えると、かなり大きな壁にぶち当たってしまうわけです。

鉄道で手荷物検査は非現実的すぎる

今回の事件を受けて新幹線も飛行機などと同じように手荷物検査すべきでは?という意見があるようです。

しかし、少し考えれば鉄道において手荷物検査は非現実的すぎることがわかります。

もし仮に手荷物検査を実施した場合、客側も会社側も多大なコストを負担することになります。

会社側からしてみれば手荷物検査を行う人員の確保や教育が必要ですし、客側も手荷物検査を見越して乗車時刻のかなり前から駅に行かないといけないことになります。

そんなの改札に立っている駅員にやらせればいいじゃないかと思うでしょうが、改札に立つ駅員というのは皆さんが思っている以上に仕事が多く忙しいポジションです。

特にターミナル駅などの大きな駅では列車が到着するたびにお客様の問い合わせに対応したり、きっぷの乗り越し精算をしたりなどなど非常に仕事が多いです。

ただ突っ立っているだけの暇な仕事では決してありません。

ただでさえ忙しい現場の駅員さんに手荷物検査をさせるなんてまともな考えではありません。また客側からしてみても、きっぷを買えばすぐに入場できて乗車できるという飛行機にはないメリットが享受できなくなるわけで誰も得しません。

そもそも東京や大阪といった大都市では数分に一本レベルで列車がやってくるのに一人一人手荷物検査なんてしていたらいつまでたっても列車に乗れません。通勤ラッシュとかどうするんでしょう?

なので乗客一人一人の手荷物検査は非現実的すぎます。

センサーやゲートに引っかかった人はどう対処するのだ?

一人一人の手荷物検査をすべきという意見もあれば、改札にセンサーやゲートなどを設置してそこで引っかかったひとだけ調べるという意見も見かけました。

一見すると手荷物検査に比べたらマシなように見えますが結局同じことです。

もし仮にこのようなセンサーやゲートを設置したとしましょうか。

そこに引っかかった人は誰がどのようにしてチェックするのでしょう?

まさか丸腰の改札の駅員さんにチェックさせたりしませんよね?センサーやゲートに引っかかった人をチェックしようとして襲われたときに対処できませんからね。

そうなるとそれ専門の人を雇うか教育して育てるしかないわけで、結局手荷物検査と同じ結末になるわけです。コストは莫大です。

客側にしても万が一引っかかってしまったときに乗る予定だった列車に乗れなくなるリスクがあるわけで、ぎりぎりの時間に行って乗車しようとする人にとっては迷惑千万な話です(駅員をやっていると信じられないくらいギリギリのタイミングで駅に来て列車に乗ろうとする人をよく見ます。)

すぐやるべきは乗務員や駅員に護身術や誤診用具を提供することだと思う

結局ここまで紹介した方法では、鉄道会社も客も多大なコストを負担することになるわけです。

人を疑う、信用できないとなると多大なコストを社会は負担することになるのです。

ただ、このまま何の対策もせずに野放しにするわけにはいかないでしょう。

現実問題すぐにできる対策として私が思うに、乗務員や駅員に護身術や護身道具を提供して何かあった時に被害を最小限に食い止める方法しかないように思います。

今回の事件では車掌さんがトランクを盾代わりにして容疑者に近寄って行ったという話を聞きました。

事件が起きたときにこのような方法しかとれなかったことを考えると例えばさすまた(Yの字型になってる棒)とか機動隊が持っているような盾とかがあればまた違った結果になったのでは?と思います。

今後このような事件が二度と起こらないようにするために今すぐやるべきは、まず乗務員や駅員の防衛能力の向上ではないかと思います。

以上、元鉄道会社職員のつぶやきでした。もう二度とこのような悲惨な事件が起きないように切に願うばかりです。